新しくシャアハウスに入居してきたペルシャ人が飯田先輩だった件
何言ってるか分からないって?安心しろ…オレも何言ってるか分からねーぜ。
あ、ありのままに今起こったことを説明するぜ……!
こんばんは西江です。
無事、来週の火曜日には仕事を辞めることをスーパーバイザーと呼ばれる上司的な人に伝えて意気揚々にルンルンとした気分で帰宅すると、ハウスのオーナーが一言
「今日あたらしく入居する人が来るよ」
とのことでした。最近 なぜか入れ替わりが激しいのが私のシェアハウスです。私も来週に仕事を辞めたら友達の家に居候させていただくことになっています。で、オーナーもどこの国籍の人が来るのかは把握していなかったので、まぁ例によって台湾人か韓国人だろうなぁと思って、ブリスベンに行ったときに買った西 加奈子さんの著書「漁港の肉子ちゃん」を読んでいたわけです。
いまだに慣れないファーム仕事の疲れからか太陽のような暖かな人間性の肉子ちゃんの心地良い言葉からかいつの間にかうたた寝してしまっていたようで、目が覚めたころには日が落ちて他のシェアメイトは外食に行ってしまったようでした。心地よくまどろみながら本を読み返していたのですが、お昼に軽くサンドウィッチをつまんだ程度なのでお腹が空いて、夕食でも作ろうかな、と思った矢先。
「HELLO!」
と勝手口から野太い男の声。
「あぁ、オーナーの言ってた新しい入居者ねハイハイ」
と男、それも声からわかるような屈強な男だったことに少し落胆しつつも勝手口のドアを開け、彼を向かい入れると…
い、飯田先輩……!?
そう、あの飯田先輩だったのでした。
いや飯田先輩は東京の足立区育ちの生粋の日本人でしたので厳密には飯田先輩ではなかったのですが、その出で立ちと風格、190㎝はあろうかという長身、半端ないすね毛の濃さ、チンピラのような麦藁色の眼鏡をかける大男は飯田先輩に瓜二つ、もはや飯田先輩と形容してもなんら問題はなかったのでした。
あの飯田先輩、といってもおそらく大抵の日本人は存じないどころか興味の欠片もないことだと思いますが、この飯田先輩 それはもう私が働いていた元会社ではすごい知名度だったのです。その人柄は弱者にむち打ち強者に媚びへつらい、上司から自身で対処しきれない量の仕事を嬉々として引き受けてはそれを余すことなく部下に丸投げをするといった常人ならば良心の呵責に耐えられないであろうことを平気でこなす敏腕な男。それが飯田先輩でした。
会社でジャンプを読んだり、スマホゲームに重課金して特に用事もないのに会社に居残り残業代を楽々とゲットする切れ者、給料日にはパチンコで金をスッた反動で夜の街(主にキャバクラ)へと繰り出し散財をする度量の大きさ、そのくせ部下と鳥貴族に行ってもびた一文も多くは出さないといった徹底した予算管理能力を兼ね揃えるおよそ理想的な上司からはかけ離れた孤高の存在、それが飯田先輩なのでした
長くなってしまいましたが、そんな飯田先輩(の瓜二つ)が目の前にいることは驚き以外の何物でもないのでした。「おいおいやべーよ、キャバクラ誘われちまう」と脳が警告します。「定時直前にKY(危険予知)シートを書かされちまう」、と
「オーナーいる?新しく入居するんだけど…」
と、とても流暢な英語を聞いて何とかこの限りなく飯田先輩に近しい、おそらくは何かしらの血縁関係のようなものがあるだろう大男がとりあえずはあの飯田先輩ではないことを認識できました。というかHadiという名前でした。胸をなでおろした瞬間でした
とりあえず、空いてる部屋に案内してシェアハウスのルール的なことを教えてあげると「ありがとう!これからよろしくね!」と飯田先輩にはできないであろう気持ちのよい笑顔と感謝の言葉を聞け、ようやくこーんなに飯田先輩のような見た目なのに飯田先輩ではないんだなぁ!不思議だなぁ!と安堵して夕食を作り始めたのでした
楽しみにしていたカレーを作っていると飯田先ぱ…Hadiが部屋から飛び出してきて
「良い匂いだね!カレー作ってるんだ!夕食をシェアしない?」
とのことなので承諾して、彼がどんな食事を作るのかを楽しみにしていたら、、、、何も作る気配がない、、、
最終的に私がカレーを作り終えると
「ちょっと待ってて!」
とHadi。部屋から持ってきたのは炊飯器のご飯とプラスチック容器に入った、なんつーか、、漬物?的な民族的なこまごまとした食べ物でした。
「いや、、Hadi、、は? 、、夕食をシェアって、、は?」と状況をつかめずにいるとHadiはすでに私が丹精込めて作ったカレーを食するのでした。
「割に合わねぇ…!!!」イライラしながら夕食をシェアさせていただきました。カレーは美味しかったです。漬物的なやつはそんなに美味しくなかったです。
やっぱり飯田先輩となんか関係あるんじゃねーかな。
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